会社員からフリーランスになると、仕事が安定するまで収入が不安定になってしまう可能性があります。そんなとき失業保険を受給すれば、決まった収入を得ながらフリーランスを目指すことができます。特に会社員とフリーランスで進路を決めかねている人は、失業保険は必見の制度です。
失業保険とは
失業保険は、文字通り失業を認められた人が受給することができる保険制度のことを言います。具体的にどんな制度なのか詳しく見ていきましょう。
失業保険は労働保険の一種です
失業保険は、厚生労働省で提供している労働保険の一種で、労働者の生活安定や就職促進のために給付されています。労働保険には、失業保険のほかにも労災保険があります。
一般的に言われている失業保険は、失業保険の基本手当のことを指しています。失業保険の基本手当を受給することで、失業後も一定額の収入が得られて、生活の心配をせずに再就職を目指すことができます。
支給開始日は仕事をやめた理由によって決まる
失業保険の基本手当は、仕事をどんな理由で辞めたかによって、支給開始日が異なります。
離職理由 | 解雇・定年・契約期間満了で離職 | 自己都合・懲戒解雇で離職 |
支給の開始 | 離職票の提出・求職の申し込み後、7日間の待機期間が経過してから | 離職票の提出・求職の申し込み後、7日間の待機期間と、さらに3ヶ月が経過してから |
基本手当の所定給付日数は条件によって変わる
失業保険の基本手当は、支給を受けられる日数に決まりがあります。給付日数は最低90日で、条件に応じて最大360日になります。この日数は、仕事を辞めたときの年齢のほか、前職の就職期間・離職理由によって変化します。
次の例は、65歳未満で自己都合退職・契約期間満了の場合の給付日数です。この場合、労働保険の被保険者として働いていた期間がどれくらいかによって給付日数が異なります。
10年未満 | 90日 |
---|---|
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
例外として、倒産や解雇による急な離職の場合は特定受給資格者という扱いになり、給付日数が増加します。さらに、職業訓練の指導先で訓練指示を受けた場合、訓練期間中に所定給付日数が終わっても、訓練が終わるまで給付が継続されるケースもあります。
また、特定の理由があり受給期間内の再就職が難しい場合は、受給期間の延長申請をすることも可能です。
1日あたりの給付額は?
失業保険の基本手当では、1日当たりの給付額を基本手当日額と呼びます。基本手当日額は次の計算で求めることができます。
基本手当日額=賃金日額×給付率(50〜80%)
計算に出てくる賃金日額は、離職日以前の6ヶ月の間に毎月決まって支払われていた賃金を合計し、180で割った金額を指します。その賃金日額をさらに50〜80%の給付率で割った金額が基本手当日額です。
なお給付率は、離職日以前の賃金が低かった人ほど高い割合になります。この給付率は60歳未満の場合ですが、60〜64歳になると給付率は45〜80%に変動します。
基本手当日額は上限額と下限額が決まっているため、極端に高額・低額になることはありません。
失業保険には受給条件がある
失業保険は、会社を辞めた人なら誰でも受給できるわけではありません。どんな人なら受給できるのか、条件をしっかりチェックしておきましょう。
失業保険の受給は失業状態にあることが前提
失業保険の基本手当は、失業状態にある人を支援するために制定されています。そのため、受給するには次の条件を満たしている必要があります。
【受給条件】
①ハローワークで求職を申し込む
②就職する積極的な意思がある
③いつでも再就職できる能力がある
上記のように、就職のために就職活動などの努力をしているのに関わらず就職できないという、失業状態であることが必要な条件になります。
またそれに加えて、離職日以前の2年間に、労働保険の被保険者である期間が通算12ヶ月以上なければなりません。新卒で初めて就職した場合なら、離職日以前に最低12ヶ月間は、会社員等の労働保険の加入者であったという実績が必要になります。
こんなときは失業保険が受けられないので注意!
続いて、失業保険が受給できない例もチェックしておきましょう。
・病気や怪我によって、すぐに就職できない
・妊娠、出産、育児のためすぐに就職できない
・定年退職し、しばらく休養したい
・結婚などにより主婦(主夫)になり、すぐに就職できない
・自営業に専念する
・次の就職が決まっている
・パートやアルバイトをしている(20時間/週の場合は支給可能なケースも)
失業保険は、すぐに就職する意志があり、本人が働ける状態にあるにも関わらず、就職が難しい状況に対して適用されます。なので、それに当てはまらない場合は失業保険が受けられない可能性があります。
フリーランスでも失業保険を受けられるケースはある?
失業保険が受けられないケースのなかに「自営業に専念する」というものがあります。フリーランスも自営業に該当しますが、必ずしも失業保険が受給できないわけではありません。例外的にフリーランスでも失業保険が受給できるケースを確認しておきましょう。
失業保険の受給は会社員を目指す人向け
失業保険は実際に就職活動を行うことを前提に受給するため、フリーランスの準備のためだけに失業保険を受けるのはNGです。そもそも失業保険は、前職を辞めたあと、再び会社員を目指す人に向けた制度です。
そのため、会社を退職してフリーランスになることだけを目的にして失業保険を受けることはできません。
フリーランスが失業保険を受給できるケース
失業保険は、「自営業を開始、または自営業に専念する場合は支給不可」とされています。ただし、前職を離職後、休職期間中に創業の準備や検討を行う場合は支給可能なケースがあります。
例1)会社員から離職し、再就職のためにハローワークに通って就職活動を行い、失業保険を受給。しかし希望の会社が見つからない、どうしても採用試験に受からないといった経緯があった上で、フリーランスを目指すことになった。
例2)ハローワークに通って就職活動を行いながら失業保険を受給。希望の職種で会社に再就職した。しかし会社が自分に合わず離職し、その後、スキルを生かしてフリーランスとして独立した。
上記のような、会社員としての再就職を望んで積極的に就職活動を行ったにも関わらず、希望の会社にどうしても入れず、結果的にフリーランスを目指すことになったという場合は、失業保険が受給できる可能性があります。
そのため、前職を辞めて再び会社員を目指しているけれど、フリーランスになるかどうかも検討している人は、まずは会社員を目指して失業保険を受けられるか審査を受けてみるのがおすすめです。
特にWEBデザイナーやライター、イラストレーターなど、会社員・フリーランス問わずに成立する職種だと該当する可能性がありますので、ぜひ受給条件をチェックしてみてください。
失業保険が受給できた場合は、あくまでもフリーランスではなく、まずは会社への就職を目指すことが必要になることを念頭に置いておきましょう。
失業保険の手続きの方法と流れ
それでは、失業保険の基本手当を受給するための手続きについて見ていきましょう。
① 手続きに必要なもの
失業保険の手続きには、次のものが必要になります。
離職票 | 離職票は退職時に会社から受け取る ※離職票には離職票−1と離職票−2がある |
---|---|
マイナンバー | マイナンバーカードまたは通知カード、個人番号のある住民票 |
身元確認証 | 免許証など |
その他 | ・本人の印鑑(署名する場合は不要) ・証明写真2枚 ・本人名義の預金通帳 ・船員だった人は船員質票保険失業保険証と船員手帳 |
特に重要なのが、離職時に会社から貰える離職票です。何社か離職して複数の離職票を持っている場合は、短期間の就職であっても全てをハローワークに提出しましょう。
② 手続きの方法
続いて、手続きの方法を順番にチェックしていきましょう。
ハローワークで求職申し込みを行う
失業保険の手続きはハローワークで行います。最寄りのハローワークがわからない場合は、厚生労働省のサイトで所在地を調べることができます。
厚生労働省:全国ハローワークの所在案内
ハローワークには、先述した手続きに必要な書類などを持参して、求職申し込みを行います。その書類等を元に、失業保険の受給資格があるかどうかの確認・決定が行われます。
雇用保険説明会に参加する
失業保険の受給資格が確定したら、雇用保険説明会に参加します。この説明会では、受給手続きの流れや、就職活動についての説明を受けることができます。
また、雇用保険説明会は受給資格証などの必要書類を受け取る場でもあります。そのため必ず参加するようにしましょう。
待機期間の満了を待つ
失業保険は、受給資格が決定してから、失業の状態が7日間経過するまで基本手当を受け取ることができません。この期間を待機期間と言います。
前職を辞めた理由が自己都合退職や懲戒解雇の場合は、待機期間満了後、さらに3ヶ月は手当が支給されないため注意が必要です。
失業の認定を受ける
待機期間が満了して失業の認定日を迎えたら、再度ハローワークに行って、受給資格証と失業認定申告書を提出しましょう。
失業認定申告書は、自分のキャリアやスキル、学歴などについて記載する書類です。その情報がハローワークに登録されて、就職支援に活用されます。ハローワークに必要書類を提出すると、就労の有無や求職活動の実績が確認され、失業の認定が行われます。
失業の認定を受けることで、基本手当の支給が開始されます。
失業保険の基本手当はいつ支払われる?
失業の認定後、失業保険の基本手当が普通預金口座へ振り込まれます。振込みまでの期間は金融機関によって異なりますが、失業の認定を受けてから、おおむね1週間ほどかかると言われています。
手続きの流れをおさらい
改めて、失業保険の手続きの流れをまとめていきます。
①ハローワークに行って求職を申し込む
②ハローワークで受給資格の確認や決定が行われる
③雇用保険説明会で説明を受け、必要書類を受け取る
④待機期間を待つ
⑤失業の認定を受ける
⑥基本手当が銀行口座へ振り込まれる
各工程ごとに必要書類の準備などが必要になりますので、ハローワークの指示に従って、漏れの無いように手続きを進めていきましょう。
失業保険について困ったときはどうすれば良い?
失業保険は、特にフリーランスを視野に入れている場合、受給できるのかどうか不安がある人が多く見られます。手続きや受給資格について不明な点がある場合は、ハローワークに相談することができますので、活用してみましょう。
失業保険は、資料では支給不可のケースに該当する場合でも、失業の状態によっては支給可能になる可能性があります。会社員になるのか、フリーランスになるか迷っていて、再就職のための支援を受けたいときは、まずはハローワークに相談しにいくのも良いでしょう。
ハローワークへの相談は、失業の認定日以外でも可能です。また、失業保険の支給日数が過ぎたあとでも、職業相談を受け付けているため、就職に困った場合は相談に乗ってもらうことができます。
結果的にフリーランスではなく会社に就職した場合、さらに就職後の給付金を受け取れるケースもあります。手続き可能かどうか確認してみましょう。
確定申告で失業保険はどう扱う?
就職活動期間中に失業保険を受給し、結果的に会社員にはならずフリーランスとして独立した場合には、前年の収入について確定申告をする必要があります。
しかし、失業保険は非課税扱いとなり、確定申告に含める必要がありません。失業保険は収入扱いにならないということを覚えておきましょう。
まとめ
当記事の要点をまとめると、次のようになります。
・一般的に言われている失業保険は、失業保険の基本手当のを指す
・失業保険は就職したいのにできない人を支援する制度
・フリーランスを目指した場合は失業保険の対象外になることも
・会社への再就職を目指したが、途中でフリーランスを目指す場合は失業保険を受けられる可能性もある
・失業保険の手続きはハローワークで行う
・失業保険について不明点はハローワークで相談できる
保険制度は受給資格や手続きなど複雑なように見えがちですが、気軽に相談できる窓口も設けられているため、積極的に利用してみましょう。失業保険を受けておくことで、安定した収入を受けつつ、会社員かフリーランスか進路を柔軟に考えていくことができます。