フリーランスになると、「経費」の知識が必要になります。なぜなら、売上がいくら多くても経費が上回っていたら赤字になってしまいます。
大切なのは、いかに無駄な経費を抑えるかです。そして次に大事なのが節税して税金を減らすこと。そのためには必要で使った経費を漏れなく正しく確定申告することです。
そこで、フリーランスが確定申告に経費として申告できる範囲と注意点を詳しく解説していきます。
フリーランスの確定申告は経費欄が一番重要
税金の基本的な計算式は、
『収入-経費=所得,所得×税率=税金』
です。
そうすると収入から差し引く経費が大きければ大きいほど課税所得が下がり、税金の額は減っていきます。ここで経費をどれだけ漏れなく正確に計上するかが勝負です!
フリーランスの経費について3つのポイント
フリーランスが経費を処理するにあたって、3つのポイントを上げます。
- 経費にしてよいものは法令で定められている
- 経費は証明が必要(レシート、領収書)
- 領収書がない場合は「出金伝票」を作る
1.経費にしてよいものは法令で定められている
税務署に指摘を受けて、数年分の経費処理を修正するのは大変な作業であり、追徴課税を課せられる可能性もあります。トラブルを防ぐためにも日頃から正しいルールのもとで経費を処理しておくことがとても大切です。
必要経費に算入できる金額として、法令で次のように定められています。
(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額-国税庁-
このように法令では、「これが経費だ」という具体的な内容はありません。
社会にはさまざまな仕事があり、フリーランスのように新しい職業が続々と生まれています。
その仕事の内容によって経費の種類や範囲が異なり、それらをすべて推測して設定することは困難です。そのため、状況次第で柔軟に対処できるように配慮されているのです。
したがって、経費は法令では文章で定められてはいますが、ケースバイケースで明確な線引きは難しいのです。フリーランスが「これは経費だ」という理由を用意できるのであれば、原則としてそれがすべて経費になります。当たり前ですが、事業に関わりのないプライベートの支出はもちろん経費にはできません。
2.経費は証明が必要(レシート、領収書)
経費を計上するためには、証明するための領収書が必要です。確定申告の際に提出することはありませんが、申告後7年間の保管義務があります。もし税務署からの提出を要求されたとき対応できなければ、修正を指摘される可能性もあるので、領収書の取り扱いには注意しましょう。
クレジットカードで支払った場合は、カード会社から送られてくる支払い明細書が領収書の代わりになります。
3.領収書がない場合は「出金伝票」を作る
バスや電車の交通費など領収書のないことが意外と多いもの。領収書が発行されない支払いは経費にできないとあきらめていませんか?
「出金伝票」を作成することで領収書の代わりになります。出金伝票は何らかの理由で領収書がないとき、支払いを証明するものです。
【使用例】
- 領収書をなくしたとき
- 電車やバスなどの公共交通機関の交通費
- 祝儀や香典などの慶弔費
- 自動販売機で購入したジュースなど
- 接待交際費の割り勘分
ただし、出金伝票は自ら発行できるものなので、証明資料としての力は弱いです。なので、あまりにも高額な支払いだったり乱用したりすると税務署から指摘を受けることもあります。そのため領収書を発行してもらえるものは、できるだけ発行してもらいましょう。あくまでも出金伝票は領収書が発行できないときの手段として考えましょう。
慶弔費は高額になりやすいため、出金伝票だけでは証明には力不足です。結婚式なら招待状、香典ならば訃報の通知などと一緒に保管しておくと信憑性が高まるでしょう。
出金伝票は、文房具店に売っているものをそのまま使います。出金伝票には「必ず書かなくてはならない項目」があります。
- 日付
- 用途
- 支払先
- 金額
「いつ」「何に」「誰に」「いくら」支払ったのかをはっきりさせておかなくてはいけません。後日に出金伝票を作成するときは、これらの項目は忘れないようにメモしておきましょう。
フリーランスの確定申告での経費計算「家事按分(かじあんぶん)」
生活と仕事が混在するフリーランスに重要となるのは「家事按分(かじあんぶん)」です。
法令では、家事関連費(家賃や電気代など業務用とプライベート用が混在しているもの)は経費として認めていません。しかし業務上必要であると明らかにできる部分のみ必要経費として認めるとしています。
按分計算(かじあんぶん)とは?
家事関連費は100%を経費にすることはできません。そこで「何割かを経費にする」ことが必要になります。その計算を「按分計算」といいますが、仕事で使う面積や時間で計算することも、月ごとに割合を変えることも可能です。
たとえば、家事按分で代表的なものである「家賃」ですが、家賃は主に面積から按分計算します。事業用のスペースが家全体の何%であるかを基準にして、割合を計算して経費を計上します。
フリーランスの家事按分の重要ポイント
しかし「家事按分」には、はっきりとした基準がないため、ある程度の目安を知っておくことも必要になります。そして重要なのは、税務署に「なぜこの割合にしたのか?」をいかに合理的に説明できるかです。
フリーランスの事業にはさまざまな種類があり、それぞれ家事按分も違ってきます。「自分がどんな事業スタイルであるか」を税務署にきちんと説明することも重要なポイントになります。
家事按分にできるもの
- 家賃
- 電気料金
- ガス・水道代
- 通信費(携帯談話料金、インターネット・プロバイダー料金など)
- 自動車関連費用(自動車購入代金、駐車場費用、ガソリン代、自動車税、車検代など)
フリーランスが確定申告で使う経費の勘定科目
青色申告決算書には指定済みの勘定科目(経費の名称)があります。確定申告の勘定科目の使い方は決まってはいません。たとえば、名刺の作成料金を「広告宣伝費」に入れる人もいれば「消耗品費」にする人もいるということです。
勘定項目 |
内容(例) |
租税公課 | 税金や公共料金として支払った費用 例)収入印紙代、個人事業税、消費税、固定資産税 |
荷造運賃 | 商品・郵便物の梱包・配送費用 例)ガムテープ代、ダンボール代、包装紙代 |
水道光熱費 | 電気代・水道代・ガス代・灯油代 |
旅費交通費 | 電車・バス・タクシー代、宿泊費 |
通信費 | 電話料金、インターネット代、郵便代 |
広告宣伝費 | 名刺作成や広告掲載、看板など業務に関する宣伝に掛けた費用 |
接待交際費 | 接待の飲食費、中元・歳暮代、香典・祝儀 |
損害保険料 | 損害保険料、自動車保険、事務所の火災保険 |
修繕費 | 建物・備品や設備などの修理代 |
消耗品費 | 10万円未満(青色申告なら30万円未満)の備品、事務用品、雑貨 |
減価償却費 | 10万円以上(青色申告なら30万円以上)の固定資産の減価償却 |
福利厚生費 | 従業員の福祉向上を目的とした活動費 例)残業食事代、慰安旅行費、お祝い金 |
給与賃金 | 従業員(フリーランス自身・同居の家族は含まない)に支払う給料 |
外注工賃 | 外部業者へ業務委託した場合の費用 |
利子割引料 | 借入金の支払利息や手形の割引料など 例)住宅ローン、自動車ローン |
地代家賃 | 事務所の賃借料、駐車場の利用料 |
貸倒金 | 売掛金や貸付金の回収不能額 |
雑費 | どの勘定科目にも属さない少額必要経費 |
専従者給与 | 青色事業専従者に支払った給料 |
フリーランスが確定申告で経費にできないもの
フリーランスが確定申告で経費にできないものがあります。まず生活費ですが、もちろん経費にはなりません。
- ⽣活費 (プライベートな飲食代・交通費含む)
- 家族に⽀払った給料(別⽣計であれば経費)
- 10万円以上のモノ(備品や⾞など)
- 借⼊⾦の返済(利息は経費)
- 敷⾦や保証⾦など(戻ってくるものは資産扱い)
- ⽣命保険など(所得控除になる)
- 健康保険料や国⺠年⾦(所得控除になる)
- 所得税、住⺠税など個人にかかる税金(消費税・事業税は経費)
- 健康診断料(本人の健康管理費は経費にならない)
- 交通違反などの罰金
基本、家族に支払った給料は経費にはできません。しかし青色申告をして専従者給与とすれば経費にできます。
10万円以上のものは一括で経費にはできません。減価償却で少しずつ経費にします。青色申告をすると特典として、30万円未満のものであれば一括で経費にできます。
フリーランスの確定申告の経費は「経費率」に注意
今は使われていませんが、以前は確定申告に「経費率」というものがありました。
経費率は「経費÷収入」で算出する、収入に対する経費の割合です。今でも税務署は、この概算経費率(業種別に適正な経費の割合)を事業の健全な経費を測る指標として活用しています。
一般的な経費率
卸売業:90%
小売業:80%
製造業:70%
飲食業:60%
サービス業:50%
これはフリーランスだけではなく法人を含む経費率ですが、事業の内容により異なるのでフリーランスが〇〇%だと言い切ることはできません。
フリーランスの経費の上限は「40~60%」が許容範囲でしょう。あまりにも常識外れの経費率は税務署から指摘を受ける可能性もあるので、証明できるよう準備をしておきましょう。
フリーランスが経費を計上するためには忘れず確定申告を
・確定申告で漏れなく正しく経費の計上をしよう
・経費は仕事用はOK、プライベート用はNG
・領収証、レシートはきちんと保管
・経費の管理は毎日の実践が大事
・フリーランスの確定申告の経費計上は、適正な経費率を参考にする
フリーランスは、仕事につながるものをどんどん経費で落としていきましょう。どこまでを経費に入れるかは、同じ答えはなく正解もありません。それだけフリーランスの経費は曖昧でややこしいものなのです。ですので、自分が経費だとする主観的なものと、他人が納得する客観的なものがセットにならないとなかなか認められません。
仕事で使って、領収書があって、ちゃんと説明できればすべて経費だということです。