フリーランスとして開業したら、開業届を提出しましょう。開業届を提出すれば確定申告で青色申告が利用でき、抜群の節税効果が得られます。さらに屋号名で口座を作るなど、フリーランスとして活動する上でモチベーションが高まるメリットも。
当記事では開業届の入手方法から、記載方法、提出の流れまで順を追って解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
開業届を提出するメリットは?
開業届はフリーランスが開業するときと、廃業するときに提出します。しかし提出義務はなく、もし提出しなかったとしても罰則はありません。
それでも開業届を提出するメリットは、確定申告の際に青色申告が可能になることにあります。開業届を出さなかった場合の白色申告は、基礎控除が10万円です。それに対して青色申告は、65万円の基礎控除を受けられます。青色申告の方が大幅に節税効果が高いのです。
※内容は記事掲載日(2020年12月)時点での税法を元にしています。
参考:税についての相談窓口/国税庁
また、青色申告にすることで赤字を翌年に繰り越すこともできます。収入が少ない期間の税負担を軽減してくれるため、開業して間もない頃は特に役立ちます。
ほかにも、小規模企業共済へ加入できるようになり、その掛金の全額が所得控除になります。さらに、屋号名で銀行口座を開設することもできますので、フリーランスの事業専用の口座を持ちたい人は開業届の提出が不可欠です。
開業するときに開業届を提出していなかった人も、後から提出することが可能です。お得に節税するためにも、開業届はぜひ提出しておきましょう。
開業届の記入方法と提出の流れ
開業届は2種類あり、それぞれ提出先が異なります。また、開業届は自分で入手しなければならないため、提出先と合わせて入手先も確認しておきましょう。
個人事業の開業・廃業等届出書
1つ目の開業届は、個人事業の開業・廃業等届出書です。こちらは税務署に事業所得を得ることを通知するための届出書で、事業開始日から1ヶ月以内に、郵送または持参して税務署に提出します。
まずは国税庁のホームページで、提出先の税務署を確認しましょう。
参考:国税庁:税務署の所在地などを知りたい方
また、自宅で活動する場合と、事務所・店舗を持つ場合では提出先が異なります。
自宅で活動する | 自宅の住所を管轄する税務署に提出する |
---|---|
事務所・店舗がある | 自宅の住所を管轄する税務署と、事務所・店舗の所在地を管轄する税務署の2箇所にそれぞれ同じ届出書を提出する |
個人事業の開業・廃業等届出書は、下記のページからダウンロードできますので、印刷して使用しましょう。提出先は所在地ごとに異なっても、書式は全国共通です。
参考:国税庁:個人事業の開業届出・廃業届出等手続
事業開始等申告書
もう一つの開業届が、事業開始等申告書です。こちらは都道府県と市区町村に、事業の開始を通知します。提出は事業開始日から1ヶ月以内に行いましょう。ただし自治体によっては、15日以内など規定が異なる場合もあるので確認が必要です。
提出先は都道府県税事務所と市区町村役場の2箇所です。郵送または持参して提出しましょう。なお、提出は都道府県税事務所のみで、市区町村への提出は不要の場合もあります。提出の可否は、事前に電話で役場に確認を取っておくと確実です。
事業開始等申告書の書式は自治体によって異なるため、各都道府県の税事務所のサイトからダウンロードするようにしましょう。下記は東京都の例です。
参考:東京都主税局
どうして2種類の届出が必要?
2種類の開業届は、記載内容が似ており、どちらも事業開始を通知するために提出します。同じような届出書を異なる提出先に出す理由は、それぞれの提出先ごとに、税金の管轄が異なるからです。
税務署は国税、都道府県税事業所・市区町村役場は地方税を取り扱っています。そのため、2種類の開業届が必要になります。
開業届は必ず2種類とも提出し、片方だけの提出にならないように注意しておきましょう。
青色申告するなら青色申告承認申請書も提出を忘れずに
記事の冒頭にて、開業届を提出するメリットとして、確定申告の際に青色申告ができるようになることを挙げました。
しかし青色申告を行う場合は、開業届だけでなく青色申告承認申請書の提出も必要になります。書類作成のうえ、開業届とは別に税務署に提出しておきましょう。
開業届と同じタイミングで青色申告承認申請書を提出しておくことで、提出忘れの防止になります。
開業届の記載方法
書類が用意できたら、続いてそれぞれの開業届の記載事項のポイントを見ていきましょう。こちらの解説と合わせて、各届出書のダウンロードサイトにある記載例も合わせてチェックしておくと、より確実です。
個人事業の開業・廃業等届出書
以下のポイントは、「活動場所は自宅」「一人で活動する(従業員を雇わない)」場合を例に解説していきます。
提出先 | 提出先の税務署名と提出日を記載 |
---|---|
納税地 | 納税地とは自宅の所在地のこと。「住所地」にチェックして自宅の住所を記載 |
氏名・生年月日・個人番号 | それぞれ記載する。控用は個人番号の記載は不要 |
職業 | 「小売業(輸入雑貨)」など、具体的な職業を記載(職業が複数ある場合は主となるものを記載する) |
屋号 | 屋号を付けない場合は記載しない |
提出の区分 | 「事務所・事業所の新設」にチェック |
所得の種類 | 「事業(農業)所得」にチェック |
開業・廃業日等 | 開業した日を記載 |
開業・廃業に伴う届出書の有無 | 青色申告を申請する場合は「有」にチェック・消費税に関する届出は「無」にチェック |
事業の概要 | 「どんなサービスを誰にどうやって提供するのか」といった具体的な内容を記載する |
給与等の支払の状況 | 一人で活動する場合は「専従者」「使用人」の欄でそれぞれ「無」にチェック |
源泉所得税の納期の特例 | 「無」にチェック |
なお、税務署では開業届の記載について無料で個別相談を受けることができます。事業概要の書き方など、自分の職種に関する記載内容で不安がある場合は活用してみてください。
事業開始等申告書
事業開始等申告書は記載箇所が少ないですが、不要箇所の抹消など記載方法に注意点があります。
「個人の事業開始・廃止」の欄 | 「開始」を丸囲みして、「廃止」を二重線で消す |
---|---|
提出先 | 提出先の事務所と提出日を記載 |
住所〜電話の欄 | それぞれ記載(電話番号は携帯でも可)・名称欄は屋号がなければ空欄 |
「規定により届け出ます」の欄 | 「開始」を丸囲みして、「廃止」を二重線で消す |
事業の種類 | 職業名を具体的に記載 |
事業開始年月日 | 開業日を記載 |
事務所又は事業所 | 自宅で活動する場合は、所在地の欄の上段に「住所地に同じ」と記載 |
開業届の提出先と提出の流れ
それでは改めて、開業届の提出の流れをおさらいしましょう。
税務署に提出する流れ
①提出先の税務署を確認
②国税局のサイトから書類をダウンロードして入手
③書類に必要事項を記載する
④開業日から1ヶ月以内に、最寄りの税務署に郵送または持参して提出する
都道府県・市区町村に提出する流れ
①提出先の都道府県税事務所を確認
②都道府県税事務所のサイトから書類をダウンロードして入手
③書類に必要事項を記載する
④開業日から1ヶ月以内に、都道府県税事務所・市区町村役場に郵送または持参して提出する(事務所によっては提出期限が短い場合もあるため確認しておく)
開業届の提出の注意点は?
開業届は提出して受理されると、書類に判子が押されます。その判子がある控えを保管しておけば、確実に開業届を提出したという証になります。そのため開業届を提出するときは、提出用・控用の2部を作成して、両方とも提出しましょう。
控用の書類は提出用をコピーしたもので大丈夫です。原本と区別が付くように、控用の書類には、上部に鉛筆書きで「控え」と書いて丸囲みしておきましょう。また、コピーした控え書類のマイナンバー部分は塗り潰しなどで番号を隠します。
郵送して提出する場合は、A4書類がそのまま入る角2封筒でも、三つ折りして入る長3封筒でも、どちらでも構いません。封筒には、切手を貼った返送用封筒も同封します。さらに「控えの返送をお願いします」といった文言を書いた付箋などを書類に添えておくと確実です。
また、提出用封筒には本人確認書類の同封も必要です。国税庁のサイトにある「本人確認書類(写)添付台紙」をダウンロードして、必要書類のコピーを貼り付けて同封しましょう。
参考:国税庁:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い
開業届の控えは、屋号名で口座を作るときや、小規模企業共済に加盟するときなどに必要になるため、必ず受け取っておきましょう。
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書類を手書きで作成するのは、書き損じや誤字の心配もあります。手書きでの書類作成に自信がない場合は、会計ソフトやクラウドサービスで提供されている書類作成機能を利用してみましょう。
書類作成機能では、簡単な入力作業だけで、個人事業の開業・廃業等届出書を作成することができます。
特におすすめなのがネット上で利用できるクラウドサービス。プランによっては無料で利用できるため、会計機能を使う予定がなくても、書類作成のために登録してみるのも有用です。
まとめ
フリーランスの開業届の要点は次の通りです。
・開業届は必須ではないが、提出することで節税に繋がる
・開業届は2種類あり、それぞれ提出先が異なる
・各書類はサイトからダウンロードして入手する
・提出書類は提出用・控用の2部作成する
・開業届は会計ソフトやクラウドサービスを利用して作成することも可能
・提出時は本人確認書類の写しも同封する
開業届は2箇所の機関に提出しなければならないため、少し手間の掛かる作業になります。しかし自宅で一人で活動するフリーランスなら、書類の記載内容はいたってシンプルです。そして一度提出してしまえば、毎年の確定申告で大きな節税効果を得ることができます。
必要に応じて便利な書類作成のサービスも利用しつつ、提出期限に遅れないように確実に開業届を提出しておきましょう。
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