現在での日本は超高齢社会に突入し、公的介護保険でも更なる財源が必要となり、給付の条件が厳しくなる傾向がみられます。フリーランスの福利厚生はサラリーマンほど手厚くないため、公的介護保険に頼るだけでなく自分で何か備えなければと不安になっている方も多いでしょう。
そこで、フリーランスの介護負担の現状と将来への備えについて考えていきます。
フリーランスの強制加入の公的介護保険とは?
介護保険とは、名前のとおり「介護にかかる費用に備える保険」です。運営主体は原則として市区町村であり、税金や保険料で運営されています。40歳になると加入が義務づけられ、介護保険料を納めます。そして介護が必要になったときに給付を受けられるという保険制度です。
公的介護保険は現物給付
公的介護保険の給付はお金ではなく、「現物」給付となっています。介護サービスを安く利用できるというイメージです。それは介護が必要になったときに原則として費用の1割を自己負担することで、必要な介護の度合いに応じて総合的な介護サービスを受けることができるというものです。
公的介護保険は自動加入
フリーランスは、40歳になると自動的に加入することになり、加入している健康保険に上乗せされて保険料が徴収されるので、自分で手続きをする必要はありません。40歳になると健康保険料が急に高くなりますので、心に留めておきましょう。65歳からは年金から天引きされます。
現在の要介護認定者の割合は?
今健康な方は、将来自分に介護が必要になるとは想像できないかも知れません。もちろん要介護状態にならなければ介護保険は必要ではないのですが、実際にどのくらいの人が要介護認定を受けているのでしょうか。
※出典:総務省統計局-日本人年齢別人口推計(平成28年10月1日現在),厚生労働省-介護給付費等実態統計(平成30年7月審査分)を参考に作成。
このデータを見ると、年齢とともに急増しています。そして85歳以上になると2人に1人が要介護認定者になっていて、誰にでも起こりうることであるといえるでしょう。
フリーランスが受けられる介護サービスは?
「要介護認定」を受ければ、要支援1~2、要介護1~5の計7段階の介護度に分けられ、その段階に応じた介護サービスを利用できます。介護度は、数字が大きくなるほどより介護が必要であるとする「介護の必要量」を示す尺度です。
区分 | 要支援・要介護認定の目安 |
要支援1 | 身の回りの世話に一部手助けを必要とする。 |
要支援2 | 要介護1と相当ではあるが、状態の維持や改善の可能性が高い。 |
要介護1 | 日常生活はほぼ1人でできるが、生活の一部(みだしなみ、掃除、歩行など)に介助を必要とする。 |
要介護2 | 軽度の介護を必要とする。
身の回りの世話全般に手助けが必要。 |
要介護3 | 中等度の介護を必要とする。
食事、排泄、移動など日常生活の動作にほぼ全面的に介助や支えを必要とする。 |
要介護4 | 重度の介護を必要とする。
介護なしでは日常生活が困難である。意思の疎通が困難。 |
要介護5 | 最重度の介護を必要とする。
ほぼ寝たきりの状態である。介護なしでは日常生活ができない。全面的に理解の低下がある。 |
要介護1~5の方のサービスは「介護給付」であり、それに対して要支援1~2の方が利用できるサービスは「予防給付」といい、介護を必要とする状態を予防するためのサービスです。
《公表されている介護サービス》
・介護サービスの利用についての相談、ケアプランの作成
・「訪問介護」など自宅で受けられる生活援助等のサービス
訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリなど
・日帰りで施設などに出かけて受けるサービス
デイサービス、通所リハビリなど
・短期間または長期間、施設などに居住(宿泊)して受けるサービス
ショートステイ、特別養護老人ホームなど
・訪問・通所・宿泊を組み合わせて受けるサービス
・福祉用具の利用にかかるサービス
このようなサービスを介護度に合わせて、ケアマネジャーと相談しながら適切なサービスを受けることになります。
詳しくはこちらで。
※厚生労働省-公表されている介護サービスについて
介護にかかる費用はいくら?
要介護と認定されれば介護サービスを利用できますが、介護の度合いにより給付の限度額が決まっています。その支給限度額を超えた分や介護保険サービス以外の利用料はすべて自己負担になりますので注意が必要です。
<居宅サービスの1ヶ月あたりの利用限度額>
介護度 | 支給限度額 | 自己負担額(原則1割) |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 |
<施設サービス自己負担の1ヶ月あたりの目安>
要介護5の人が多床室を利用した場合 |
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施設サービス費の1割 | 約25,000円 |
居住費 | 約25,200円(840円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 |
約101,700円 |
※介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安
出典:厚生労働省
フリーランスは公的介護保険だけで万全?
上述のように、介護サービス費用が自己負担1割とはいえ、かなりの金額になります。フリーランスにとって将来、国民年金だけでは補えない金額です。
フリーランスは民間の介護保険に加入しておくと安心
民間の介護保険には、入っておくほうが安心でしょう。貯蓄がしっかりできていていざというときに対応できる状態であれば、わざわざ民間の介護保険の加入は必要ありません。公的介護保険の保障が不十分である部分の補充は、別に介護保険でなければならないということはないのです。
今、介護への備えが不安であれば貯蓄が十分にできるまで、とりあえず民間の介護保険に加入しておくという利用方法もあります。
民間の介護保険は現金支給
民間の介護保険は、被保険者が要介護状態になったときに保険金が受け取れるしくみになっています。民間の介護保険は現金給付というのが特徴です。保険金の受取方法は、一時金としてまとまった金額を受け取る、年金として毎年受け取る、そして一時金と年金の併用の3パターンあります。
自宅での介護が必要になったときのバリアフリー対応のリフォーム代など、いざ多くの資金が必要になったときに役立ちます。他にも、資金さえあれば競争率の高い公的な特別養護老人ホームではなく、民間の老人ホームへの入居も可能になります。
民間の介護保険料は控除対象
フリーランスは、介護保険料を確定申告することで「介護保険料控除」が受けられます。1年間支払った保険料に応じて所得から最大4万円が控除でき、所得税が軽減されます。
まとめ フリーランスに介護保険は必要?フリーランスの老後の備えについて
・85歳以上は2人に1人が要介護認定者
・公的介護保険は現物給付
・民間の介護保険にひとまず加入しておくのもあり
・民間の介護保険料は控除対象になる
公的介護保険は、最低限の保障しかされません。要介護であっても、在宅や施設での適切な介護サービスが受けられない「介護難民」が増加しているのも社会問題となっています。
フリーランスは将来のために、国民年金や公的介護保険だけに頼ることなく、任意で加入する民間の保険なども活用していく必要があるでしょう。安心してシニアライフを送るためには、介護難民にならないことが必須です。今のうちに自分だけでなく家族のためにも老後の準備を進めておきたいものです。