あらゆる商品やサービスに課税されている消費税は、フリーランスの売上が一定額以上になると、決まった税額を国に納めなければなりません。個人で事業を行うフリーランスでも、消費税の課税事業者になる可能性があるため、あらかじめ消費税についてしっかり知識を身につけておきましょう。
消費税とは
まず、消費税とはどんなものなのか確認していきましょう。
あらゆるものに課税される消費税
お店で買い物をすると、多くの商品の値段が「本体価格+税」で計算されているのが見られます。ここで掛かっている税金が消費税です。
消費税は、国内で商品やサービスを購入したときに課税されるものを指します。一部の不課税または非課税の取引を除いた、ほとんどのものに課税されています。
フリーランスは消費税の預かりと支払いをしている
消費税が掛かる商品・サービスを提供しているフリーランスは、売上金の一部として一旦手元に消費税を預かることになります。その消費税は翌年の確定申告にて、国に納税しなければなりません。
また、消費税は預かるだけでなく支払うこともあります。例えば業務に必要なパソコンや事務用品を購入すれば、その経費に掛かった消費税を購入先に預けていることになります。
つまり、フリーランスは日常の業務の中で、消費税の預かりと支払いの両方を行っているということを覚えておきましょう。
消費税が掛かる商品・サービスを提供する
=消費税を一旦預かる
消費税の掛かる商品・サービスを支払う(経費や設備費など)
=消費税を支払う
消費税の確定申告では、売上にて預かった消費税から、経費などで支払った消費税を引いた分が納税額になります。
消費税の課税対象・免税対象になるケース
消費税に関わる商品・サービスを提供しているフリーランスには、消費税の納税義務が発生します。しかし特定の事業者以外は免税対象となるため、実際のところ小規模なフリーランスでは消費税を納税するケースが限られてきます。
消費税の課税対象の可否は過去の売上で決まる
消費税の課税対象にならかった事業者は、消費税の納税も確定申告もする必要がありません。消費税の課税対象の可否は、前年だけでなく前々年の売上も含めてチェックします。
消費税の課税対象となるのは、次の2つのケースです。
基本:前々年の売上が1,000万円を超える
例外:前年1月〜6月末の売上が1,000万円を超える(=特定期間の例外)
もし上記に該当せず消費税の課税対象にならなければ、売上金として一旦預かった消費税は、そのままフリーランスの所得になります。
消費税が非課税になっても、消費税を含めた売上金は所得税の課税対象になります。
開業2年目までは消費税が免税になる
消費税は前年・前々年の売上を基準にして決められるため、開業1〜2年目は自動的に免税になります。また、開業3年目以降も、前々年の売上が1,000万円未満なら引き続き免税になります。
そのため開業3年目からは、前々年の売上が消費税の課税対象になるかどうか、しっかりチェックしておくようにしましょう。
免税事業者でも消費税を含めた請求をしてOK
消費税の課税対象になるか、免税対象になるかは、実際に一年の売上を算出しなければ判断できません。また、経費では消費税を支払っているのに、提供している商品・サービスからは消費税を抜かなければならないというのもおかしな話です。
そのため、フリーランスの売上が1,000万円を明らかに超えない場合でも、商品・サービスに消費税を含めて請求して良いとされています。
例えばフリーランスの職種がWEBデザイナーの場合、WEBデザイン料が10万円であれば、実際に顧客に請求するときは10万円+消費税で請求することが可能です。
事業が小さくて消費税の課税事業者にならないからといって、自分が請求するサービスの価格を非課税にする必要はないことを覚えておきましょう。
消費税の課税事業者になったときは?
前々年の売上もしくは前年の売上が消費税の課税対象になったら、税務署に課税対象であることを申告しましょう。その申告は、課税対象となった年の消費税額を計算した「消費税及び地方消費税の確定申告」を税務署に提出することで行います。
消費税の課税対象になったあとの年も、ふたたび売上が1,000万円未満になれば免税対象に戻ります。免税対象者になったら、税務署で免税手続きを行うようにしましょう。
消費税の納税額の計算方法は2つある
実際に納税する消費税は、「預かり−支払い」で決定されます。
しかし一つ一つの消費税額を厳密に記録していくのは大変なため、納税額の計算方法は2種類用意されています。計算方法は、厳密に預かりと支払いの差額を出す方法と、簡易的に算出する方法から選ぶことが可能です。
原則課税方式
原則課税方式は、細かく納税する対象額を算出する方法です。
「売上に掛かる消費税−仕入れに掛かる消費税」で消費税の納税額を算出します。計算方法や納税の流れの詳細は、国税庁のサイトで確認できます。
原則課税方式では、厳密に納税する消費税を出すことができます。その反面、各取引ごとに消費税額を計算するため、相当な手間がかかる点に注意が必要です。
この方式で消費税を計算するときは、国税庁のサイトまたは税務署で入手できる次の3つの書類を元に計算するのが便利です。
・課税取引金額計算表(事業所得用〔表イ〕)
・課税売上高計算表〔表ロ〕
・課税仕入高計算表〔表ハ〕
国税庁:下書き用申告書等
このほかにも、青色確定申告決算書や各帳簿、固定資産台帳などを参考にして売上額の詳細を確認しましょう。
簡易課税方式
簡易課税方式は、売上に掛かる消費税に「みなし仕入れ率」を掛けることで、仕入れに関わる消費税はどれくらいかを大まかに算出する方式です。こちらも詳細を国税庁のサイトで確認することが可能です。
簡易課税方式の計算で使われる「みなし仕入れ率」は、フリーランスの業種によって異なります。経費や仕入れの割合は業種によって異なるため、仕入費用が多い業種になるほど実際の仕入れ率も高く設定されています。
事業の内容 | 仕入れ率 | |
---|---|---|
卸売業 | 購入した商品をそのまま他の事業者に販売する事業 | 90% |
小売業 | 購入した商品をそのまま消費者に販売する事業 | 80% |
製造業等 | 農業、漁業、建設業、製造業、製造小売業など | 70% |
その他の事業 | 飲食サービス業など | 60% |
サービス業等 | 情報通信業、飲食以外のサービス業など | 50% |
不動産業 | 上記に該当しない不動産業 | 40% |
なお、簡易課税方式を適用するためには特定の条件を満たす必要があり、全てのフリーランスが活用できるわけではない点に注意が必要です。
消費税の申告方法
続いて、消費税の申告方法を見ていきましょう。
消費税の課税事業者になったら税務署に申告を
消費税の課税対象になったフリーランスは、対象となった年の売上から消費税額を計算して、翌年の3月31日までに税務署へ「消費税の確定申告」と、消費税の納付を行います。
例えば、2018年に課税対象者になったら、翌2019年の1月1日〜3月31日までに確定申告と消費税の納付を済ませる必要があります。
消費税の確定申告は、所得税の確定申告とは別に行います。
消費税の確定申告の方法
消費税の確定申告では、2つの書類を税務署に提出します。
・消費税及び地方消費税の確定申告書(一般用)
・課税売上割合・控除対象仕入税等の計算表〔付表2〕
また、上記の書類提出と合わせて、本人確認書類を提示するか、コピーを提出しなければなりません。本人確認書類には、マイナンバーカードや、マイナンバーの番号確認書類、免許証などの身元確認書類などがあります。
消費税の確定申告に関する詳細な情報は、国税庁のサイトで資料をダウンロードするか、税務署で貰うことができます。
消費税の確定申告は、次の3つから申告方法を選ぶことが可能です。
・郵便または信書便で最寄りの税務署に送付する
・最寄りの税務署に直接提出する
・e-TAXで申告する
消費税の確定申告の流れ
消費税の確定申告の流れをまとめると、次のようになります。
①消費税の課税対象となるかを判断する
②消費税の納税額を計算する
③必要書類を入手・記入する
④郵送・直接提出・e-Taxのいずれかで翌年1月1日〜3月31日までに提出する
課税対象者になったら、所得税の確定申告と同時進行で処理を進めなければならないため、スケジュールに余裕を持って取り組むようにしましょう。
申告内容に誤りがあったら訂正を
もし消費税の確定申告の内容に誤りがあったら、早めに訂正を行うようにしましょう。
修正申告:
自己申告しなかった場合は税務署長が正しい金額に更生する
更生の請求:
申告期限から5年以内に行う
もし誤った税額のまま訂正がない場合や、提出期限に遅れた場合などは、別に加算税の賦税(ふぜい)や、延滞税が掛かってしまうこともあるため注意が必要です。さらに消費税を滞納したままだと、財産差し押さえなどの滞納処分になるケースもあります。
特に税額を少なく申告してしまった場合は、気がついた時点で早急に訂正を行うのが大切です。
消費税の納付方法
消費税の納税額が確定したら、納付期限までに納付を行いましょう。納付方法は次の4通りから選ぶことができます。
振替納税 | 指定した金融機関の口座から、自動的に納税額を引き落とす。 |
---|---|
現金納付 | 現金に納付書を添えて、金融機関または税務署の窓口で納付する。 |
e-Tax納付 | e-Taxのサイトから電子納税を行う。 |
クレジットカード納付 | 専用のWEB画面からクレジットカードを使って納付を行う。 |
フリーランスの事業が大きくなって、毎年のように消費税の課税業者になる場合は、自動的に消費税を引き落としてくれる振替納税を利用すると便利です。
消費税の納付期日や方法については、国税庁のサイトで詳細を確認できます。
国税庁:申告と納付
納付期限は4月上旬になります。期日は国税庁または税務署で確認しておきましょう。
まとめ
当記事の要点をまとめると、次のようになります。
・消費税は多くの商品やサービスに課税される
・フリーランスは消費税の預かりと支払いを行っている
・消費税は前年及び前々年の売上に応じて課税可否が決められる
・消費税の納税額の計算方法は2種類ある
・課税対象者になったら税務署に確定申告を行う
フリーランスの事業が小規模なうちは消費税は免税となりますが、毎年の売上チェックは欠かさず行って、うっかり消費税の納付漏れにならないように注意が必要です。消費税の課税対象者になることを、フリーランスとして大成するための目標として掲げて見るのも良いでしょう。