フリーランスの間では、「春のボーナス」とも呼ばれている「還付金」。この還付金のために確定申告を頑張っている人も少なくないでしょう。戻ってくるべき還付金をしっかり受け取るためには、支払った源泉徴収税を確定申告で漏れなく正しく計上しなければいけません。
ここでは、フリーランスの還付金と源泉徴収の関係を解説していきます。そして還付金がいくらになるのかの計算方法もご紹介します。
還付金とは?
還付金とは、納付・徴収された税金に納め過ぎがあった場合に、納税者に返還されるべき税額をいいます。
「源泉徴収」や「予定納税」という手段で前払いした所得税を、確定申告をすることによって、正しい納税額に精算します。そして精算されて戻ってきた税金が還付金です。よって、実際にはお金を得することも損をすることもありません。
フリーランスの源泉徴収とは?
報酬を支払う側が事前に報酬から所得税・復興特別所得税を差し引いて、フリーランスの代わりに納税します。これを源泉徴収といい、こちらからすれば、一旦仮の額で税金を前払いしている形です。
復興特別所得税
2011年の東日本大震災をきっかけに導入されました。被災地復興のための財源確保を目的として特別に制定された税金です。税額は、源泉徴収の対象となる所得税額の2.1%相当です。源泉徴収される所得税と復興特別所得税の合計を納付するため、「合計税率」として算出するのが一般的です。この制度の適用期間は平成25年から平成49年までとなっています。
フリーランスの還付金の仕組み
フリーランスは1月1日から12月31日の1年間の収入を確定申告することで、所得税額を算出します。その際、源泉徴収された税額が所得税額よりも多かった場合、その差額が戻ってきます。
この還付という仕組みにより、フリーランスは所得税を払い過ぎることなく納税できるのです。
還付金がいくらになるのか計算してみよう
それでは、実際に還付金がいくらになるのか計算してみましょう。
還付金は、『源泉徴収額-(その年の所得税+復興特別所得税)』で算出できます。
所得税の計算方法
【所得税の計算式】
収入-必要経費-所得控除=課税所得
課税所得×所得税率-税額控除=所得税
所得税率は下の表のように、課税所得金額によって税率と税額控除が決まっています。1年間の収入金額から必要経費と各種控除額を引き、その金額に所得税率をかけて税額控除を引くと所得税となります。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
還付金の計算
例えば、収入500万円、必要経費200万円、所得控除80万円、源泉徴収税50万円の場合 として還付金の計算をしてみます。
収入-必要経費-所得控除=課税所得
500万円-200万円-80万円=220万円(課税所得金額)
課税所得×所得税率-税額控除=所得税
220万円×0.1-9万7,500円=12万2,500円(所得税額)
※上の所得税の速算表で確認します。
ここで所得税に復興特別所得税を加算して税額を算出します。
12万2,500円×0.021(復興特別所得税率2.1%)=2,572.5円(復興特別所得税額)
12万2,500円+2,572.5円=12万5,072円(所得税額)
※端数切捨て
そして、所得税額と源泉徴収税額の差額が還付金となります。
50万円(源泉徴収税額)-12万5,072円=37万4,928円(還付金)
源泉徴収額の計算
1回の報酬が100万円以下の場合、税率は一律10.21%です。
(所得税10%+復興特別所得税0.21%=源泉徴収税10.21%)
請求金額から源泉徴収税を引いた額が実際に受け取る金額になります。
報酬+消費税-源泉徴収税=手取り金額
源泉所得税の小数点以下の端数は切り捨てます。
10,000円の原稿料をもらうと仮定します。
①「税込み10,000円」の場合
10,000円(税込報酬額)×0.1021=1,021円(源泉徴収税)
10,000円-1,021円=8,979円(手取り金額)
報酬が消費税込みの場合は、消費税込みの金額に源泉徴収税率をかけて源泉徴収額を計算します。
②「税別10,000円」の場合
10,000円(報酬額)×0.1021=1,021円(源泉徴収税)
10,000円×0.08(消費税率)=800円(消費税)
10,000円+800円-1,021円=9,779円(手取り金額)
報酬額と消費税額が明確に分かれている場合は、消費税を含めていない報酬額に源泉徴収税率をかけて算出しても良いことになっています。
③「手取り10,000円」の場合
クライアントが源泉徴収税を負担してくれることもあります。
税込報酬額は、報酬を0.8979(1-0.1021)で割ることで算出できます。
10,000円(手取り金額)÷0.8979=11,137円(税込報酬額)
11,137円(税込報酬額)-10,000円=1,137円(源泉徴収税)
フリーランスが還付金をしっかり受け取るためのポイント
通常、企業からフリーランスへの報酬は源泉徴収が義務となっているので、ほとんどの場合は還付金が発生するでしょう。そこで還付金をしっかり受け取るためのポイントを押さえましょう。
フリーランスは受け取った報酬に注意する
フリーランスの仕事の報酬には、内容によって源泉徴収をされるものとされないものがあります。そのためフリーランス全員に還付があるとは限りません。
そこでフリーランスは受け取った報酬には注意が必要です。職種によっては支払い側が源泉徴収していて、すでに納税済みの場合があります。つまり受け取る報酬には、納税済みのものと未納税のものが混在している可能性があるのです。
フリーランスは確定申告をして納税するため、重複して納税してしまう危険性があります。そのため、いくつも報酬を受け取るフリーランスは、どの報酬が源泉徴収されているのかいないのかをきちんと把握しておく必要があります。
支払調書があれば確定申告の記載が楽
年明けにクライアントから「支払調書」が送られてくることがあります。誰に、どんな内容の仕事を、いくらで依頼し、いくら源泉徴収したのかがわかる書類です。支払調書を受け取ったら、「支払金額」を収入欄に「源泉徴収税額」をそのまま源泉徴収税額として確定申告に記載します。
自分で源泉徴収税を計算して帳簿付けの習慣をつける
ただこの支払調書は、クライアントがフリーランスに交付する義務がないため送られてこない場合もあります。そして確定申告にも添付する必要のないものなので、支払調書がない場合、自分で源泉徴収額を計算して確定申告書に記載する必要があります。
まずは受け取った報酬が源泉徴収されているか確かめましょう。自分で源泉徴収税を計算して請求書と受け取り額を照らし合わせれば、確認できるはずです。
支払調書がないことを見越して、報酬を受け取る際、自分で「源泉徴収額」を計算して帳簿につけておく癖をつけると確定申告のときに困ることがありません。
フリーランスは所得が少なくても還付金のために確定申告を
フリーランスが確定申告をするのは、節税のためでもありますが、還付金を受け取るためでもあります。所得が38万円以下で確定申告の義務がない場合でも源泉徴収されていれば、確定申告をすることで源泉徴収された税金がそのまま還付されることになります。
還付申告の期限は5年間
還付を受けるための申告(還付申告)は、確定申告の期間と関係なくできます。還付申告できる期限は、翌年の1月1日から5年間です。もし還付申告を忘れていても、5年間は遡って還付金を受け取ることができます。
まとめ
・「還付金」は源泉徴収税と確定申告で算出された所得税との差額
・源泉徴収は義務であり、確定申告をすれば損はしない
・支払調書は気にせず、自分で源泉徴収税を計算して確定申告しよう
・所得が少なくても還付金のために確定申告をしよう
フリーランスが戻ってくるべき還付金をしっかり受け取るには、得られる控除や源泉徴収額を漏れなく正確に確定申告することです。
しかし還付金を受け取っても、住民税や社会保険料の支払いも待ち受けているので、使い道も計画的に考えたいものですね。